小野寺系

権力を行使して人々を従わせ、愛情や奉仕を強要しなければ、それを得られない女王は、なんとみじめなのだろうか。国家の中枢、権力の頂点に位置するのは、そんなみじめな人間たちなのである。 だが本作は、このような古い政治体制を笑っているだけではないはずだ。世界的に経済格差が拡大する現在の社会の中では、権力の固定化が強まっている。実際に政治を動かすのは、往々にして庶民の生活とは縁のない上流の側の人々である。そんな生活を送っている人間の社会観は、えてして本作のそれと変わらないのではないのか。 そして本作が真に笑っているのは、彼女たちを滑稽だとも、哀れだとも感じる我々が、自分たちの社会だけはまともな仕組みで運営されていると思いこんでいる、甘い認識なのかもしれない。その意味で本作は、やはり笑えない悲劇なのだ。